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日本の保険制度の1つに「公的医療保険制度」というものがありますが、ご存知の方も中にはいらっしゃると思います。
こちらの制度は、保険の加入者および加入者の家族が、病院で治療を受けたり薬局で処方箋をもらったりする際にかかる医療費のうち、一部を公的機関が負担してくれるというものです。
また、日本国民の誰もが、安心して「必要なときに必要な医療を受けられる」ことが目標とされており、公的医療保険制度には国民全員が加入することとなっています。
こちらを「国民皆保険制度」と呼び、国民は政府管掌保険・組合管掌保険・国民健康保険・船員保険・各種共済組合のいずれかに加入することが必要とされています。
ちなみに、国民皆保険が正式な制度として開始されたのは1961年のことで、それ以前は企業で働く人々のみを対象にした制度など、限定的なものが施行されていました。
加入する保険は、加入者の雇用形態や年齢などによって異なりますが、「健康保険」と「国民健康保険」のどちらかには、ほとんど全ての国民が加入しています。
国民の多くに馴染みがあるはずの「健康保険」と「国民健康保険」ですが、
「健康保険と国民健康保険って、呼び方が違うだけで同じ保険のことじゃないの?」
「健康保険にいくつも種類があるの?」
などという疑問をお持ちの方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、本記事では2つの保険の違いやそれぞれの特徴についてご紹介していきます。
先ほどもご紹介した国民皆保険制度のもとで、日本国民のほとんどが「健康保険」と「国民健康保険」のどちらかに加入しています。
どちらの保険にも、処方箋や治療などを含めた医療費のうちの70%以上がカバーされる、なんとも嬉しいシステムがあります。
こちらのシステムを詳しく説明すると、
という風に、被保険者の年齢や所得額によって、医療費の70%から90%が国や地方自治体の公費や保険料によってカバーされる仕組みとなっています。
たとえば、健康保険か国民健康保険のいずれかに加入している40歳のサラリーマンが、風邪を引いて病院に行き、診察してもらって薬をもらったとします。
通院費と薬代が合わせて3,000円かかったとすると、もし彼が保険に加入していなかった場合、支払わなければならない費用は10,000円にもなってしまいます。
また、もし80歳のおばあさんが、お医者さんから処方された痛み止めの薬を薬局で購入したとすると、保険なしでは5,000円もかかるところが、保険に入っていることでたった500円の支払いで済むことになります。
どちらの例も、健康保険・国民健康保険に加入しているのとしていないのとでは、金額の大きな違いが一目瞭然ですね。
そんな嬉しいシステムを持つ2つの保険ですが、どちらも「健康保険」や「健保」などと呼ばれることがあり混同されがちです。
ですが、「健康保険」と「国民健康保険」は全く異なる保険です。
それでは一体、何がどのように異なるのでしょうか?
以下では、それぞれの保険の特徴や違い、加入の条件などについてご説明していきます。
「健康保険」と「国民健康保険」には異なる点がいくつかありますが、最も大きな違いは、健康保険は企業や団体などで雇用されている人たち、つまり「被雇用者」用の保険だという点です。
そのため、健康保険は共済組合や船員保険とまとめて「被用者保険」と呼ばれることがあります。
また、介護保険・年金保険・雇用保険などとともに「社会保険」に含まれています。
社会保険とは質病や失業などのリスクに備えた公的な保険制度で、日本の社会保障制度のうちの1つです。
健康保険は「組合健保」、「協会けんぽ」、「共済組合」の3種類を含めた数種類に分かれています。
組合健保と協会けんぽは、それぞれ健康保険の加入者全体のうち4分の1を占めており、共済組合は全体の7パーセント程度の人々が加入しています。
以下で、それぞれの違いについて簡単に説明いたします。
組合健保とは、700人以上の従業員を雇用している企業が自分たちで作った独自の健康保険組合のことを指します。
また、従業員の数が合計で3,000人以上になる場合は、複数の同業の企業が共同で健康保険組合を作ることもできます。
この場合は、単一の企業が作った組合を「単一健康保険組合」と呼ぶのに対し、「共同健康保険組合」という名称を使用します。
組合健保はそれぞれの企業が独自で作った健康保険組合であるため、保険料や休業補償、医療費の上限などの決まりもそれぞれ異なっています。
就職活動の際には、気になっている企業の組合健保の内容を確認するのもお忘れなく。
協会けんぽは、被用者保険の中で加入者の数が最も多い保険です。
以前は社会保険庁が同様の業務を担当していましたが、社会保険庁が解体された後に協会けんぽが設立され、業務を担当するようになりました。
なお、協会けんぽというのは実際は愛称で、正式名称は「全国健康保険協会」です。
従業員の数が多い大企業と異なり、中小企業では協会けんぽに加入する場合が多くなっています。
およそ10年前までは協会けんぽの保険料は全国一律でしたが、2009年より保険料が都道府県ごとに決定されるようになっています。
各都道府県の保険料率は10パーセント前後となっており、毎年度引き上げられたり引き下げられたり据え置きのままだったりと、それぞれの地域によって異なります。
2018年度に全国で最も保険料率が高いのは佐賀県で10.61パーセント、最も低いのが新潟県で9.63パーセントです。
共済組合は、主に公務員が加入している健康保険組合です。
共済組合の種類は、国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員など加入者の職種によって異なり、現在は全部でおよそ90種類の共済組合が存在します。
保険料率も共済組合ごとに異なり、低いものでは7パーセント未満のものから、高いものでは10パーセント以上のものまで大きな差があります。
また、組合ごとに保養施設やレジャー施設を保有していたり提携していたりするので、各地のプールや博物館など様々な施設を割引料金で利用することが可能となっています。
組合健保・協会けんぽ・共済組合と順にご紹介してきましたが、どの健康保険にも共通しているのが、保険料が加入者とその雇用主から半分ずつ支払われるという点です。
あなたの勤め先が毎月の支払い額のうち半分を負担してくれているということをご存知でしたか?
ちなみに、あなたが支払うべき保険料の金額は、毎月の給与から事前に差し引かれています。
もう1つの共通点は、健康保険は加入者の家族もカバーしてくれているという点です。
たとえば、あなたが健康保険の加入者で、あなたの配偶者や子どもがあなたの収入を生活の糧としている場合、家族は「被扶養者」と呼ばれ、保険料はそのままで配偶者や子どもも健康保険の恩恵を受けることができるのです。
被扶養者の数が増えても、保険料が影響を受けないのは嬉しいですよね。
3つ目の共通点は「付加給付制度」というものです。
付加給付制度とは、1か月間の医療費の自己負担額を事前に決めておき、実際に支払った額が限度額以上の場合は超過した金額が払い戻される制度です。
たとえば、自己負担限度額が毎月25,000円に設定されている健康保険加入者が、事故や病気などで医療費に100,000円かかったとします。
その場合、限度額を超える75,000円が加入者の手元に戻ってきます。
なんともありがたい制度ですね。
様々なサポートを受けられる健康保険ですが、だれが加入の対象なのでしょうか?
もし、あなたが以下の5つの条件を全て満たすようであれば、あなたは健康保険に加入する対象であるかもしれません。
自分が健康保険に加入しているか、適切な保険料を支払っているかなど、今一度確認しておくのも良いかもしれません。
健康保険と異なる人々が対象の国民健康保険ですが、だれが対象でどのようなサポートを提供しているのでしょうか?
はじめに、国民健康保険の加入対象となる人々は以下の通りです。
これらの条件を全て満たす人は、国民健康保険へ加入する対象となります。
なお、あなたの配偶者や親など、あなたの「扶養者」がすでに健康保険や他の公的医療保険に加入している場合は、あなたはその保険の被扶養者となっている可能性があります。
その場合は、国民健康保険に加入することができません。
複数の条件やルールがありますが、簡単に言うと「健康保険への加入対象ではない人が国民健康保険の加入対象である」と捉えると分かりやすいかと思います。
では、国民健康保険と健康保険は何が異なるのでしょうか?
1つ目の違いは、国民健康保険の保険料は加入者が100パーセント負担するということです。
先ほどもご紹介した通り、健康保険では加入者と雇用主がそれぞれ保険料の50パーセントずつを負担していましたが、国民健康保険では事業者の負担はなく加入者が全て負担します。
もう1つは、国民健康保険では「被扶養者」という枠がないという点です。
健康保険では加入者の家族は被扶養者と扱われるので、加入者1人分の保険料のままで加入者の家族も保険のサポートを受けることができるということは、先ほどご説明いたしました。
それとは反対に、国民健康保険では被扶養者という考え方がないため、家族の人数が多くなるほど保険料も高額となります。
保険料は、家族のメンバーそれぞれの年齢や所得などから決定されます。
このように、国民健康保険の保険料は、健康保険に比べて高額になり得ます。
毎月の生活費の重荷になってしまう場合もあるかもしれません。
ですが、月々の保険料の負担に比べ、毎月きちんと支払うことでいざというときに受けられるサポートの方がきっと大きいはずです。
「この保険に入っていてよかった」と思う日がくるかもしれませんので、きちんと加入・支払いをしておきましょう。
なお、国民健康保険への加入手続きは、地元の市役所などで行うことができます。
必要な書類や身分証明書などを提出することで加入が可能ですので、加入をお考えの方はお住いの市区町村のウェブサイトなどで詳しい情報を確認してみてください。
ここまで健康保険と国民健康保険について説明してきましたが、実際に自分がどの保険に加入しているのかはっきりと分からないという方もいらっしゃるかと思います。
そんな方は、ぜひ今すぐご自分の「健康保険証」を見てみましょう。
今からお伝えするポイントをチェックすると、自分がどの健康保険に加入しているのかがすぐに分かりますよ。
まずは、保険証の下あたりに記載されている「保険者番号」を確認してみましょう。
数字の数は、健康保険を含む被用者保険では8桁、国民健康保険証では6桁となっています。
また、被用者保険用の保険証には「法別番号」というものがあり、8桁のうちの最初の2桁がこれにあたります。
法別番号は被用者保険の種類を表しており、組合健保は06、協会けんぽは01、共済組合は31から34となっています。
うしろの6桁は被用者保険と国民健康保険の保健所者番号は同じものを表しており、初めの2桁が都道府県を表し、次の3桁が市区町村などを表しています。
最後の1桁は「検証番号」もしくは「チェックデジット」と呼ばれるもので、前の7桁もしくは5桁が正しいかを示しています。
このように、保険証の保険者番号を見ればあなたがどの保険に加入しているかが分かるのです。
そして、「保険者名」という部分にはあなたが加入している保険の保険者、つまりあなたが働いている会社や住んでいる自治体の名前が、「記号」という部分には保険者の固有番号がそれぞれ記載されています。
そのため、8桁もしくは6桁の保険者番号をみて自分の保険の種類を確認し、保険者名や記号を見て自分が加入している保険の保険者を確認することができるのです。
保険証1枚で加入している保険がどれか分かるので、職場の契約書などの書類を読み返すが必要ないのが嬉しいですね。
良い機会ですので、自分がなんという保険に加入しているのか、その保険にはどのような補償があるのかといったことを調べてみると良いかもしれません。
以上、健康保険と国民健康保険についてご紹介いたしました。
今まで知らなかった様々な決まりに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
いざというときの為に、健康保険・国民健康保険への加入はもちろん、毎月の支払いをしっかり行いたいですね!
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